生活習慣病について ②糖尿病の診断と治療
2024年6月に生活習慣病についての診療報酬改定に伴い、高血圧のブログを更新しました。
今回は第二弾として糖尿病です。
糖尿病とは
私たちは食物から栄養を摂取し、生命を維持しています。米やパン、果物などの炭水化物は、体を動かすエネルギーとなります。
炭水化物は消化されることでブドウ糖に変わり、小腸から吸収されて血液に入り、血糖値が上昇します。血糖が上昇すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を一定(通常は70‐140mg/dl程度)に保ちます。
糖尿病とは、このインスリンの分泌量や働きに異常が生じ、血糖値が高い状態が続く病気です。
糖尿病には1型と2型がありますが、今回は患者様が多い2型糖尿病について取り上げます。
糖尿病の診断
糖尿病の診断には以下の検査があります。
- 空腹時血糖(10時間以上絶食した翌朝の血糖)
- 随時血糖(食後の血糖)
- HbA1c(最近の1-2か月の血糖の平均的推移も示した値で食事に左右されません)
- ブドウ糖負荷試験(75g経口ブドウ糖を飲んで飲む前、飲んでから2時間の血糖の推移をみる精密検査)があります。
これらの検査結果を組み合わせて診断します。
例えば、空腹時血糖が126mg/dl以上、またはHbA1cが6.5%以上であれば、糖尿病と診断されます。逆に、空腹時血糖が99mg/dl以下で、HbA1cが5.5%以下であれば正常です。
糖尿病か正常かの境界にある場合は、下表の組み合わせで診断します。糖尿病の疑いがある場合、3~6ヵ月以内に再検査を行います。
糖尿病の合併症
糖尿病の初期段階では症状が現れないことが多いですが、重症化すると尿糖が増え、それに伴って尿量も増加し、喉が渇きます。
また、エネルギー不足により、脂肪や筋肉のタンパク質が利用され、倦怠感や体重減少が生じます。
初期には症状がほとんど見られないため、「なぜ治療が必要なのか?」と思われるかもしれません。しかし、糖尿病は血管を徐々に傷つけていく病気だからです!
動脈硬化
糖尿病患者様は、高血圧や脂質異常症を合併することが多く、動脈硬化が進行しやすいです。
血管が詰まったり、破れて出血したりすると、脳梗塞や脳出血、心筋梗塞、狭心症、さらには足の血管が詰まることで命にかかわる疾患を引き起こします。これらは糖尿病の前段階から進行します。
糖尿病の三大合併症
- 糖尿病性神経障害:神経に栄養を送る血管が傷つき、しびれや痛み、めまいなどが発生します。最も頻度が高く、糖尿病発症後5年で現れます。初期には自覚症状がほとんどないため、注意が必要です。
- 糖尿病性網膜症:網膜の血流が悪化し、最悪の場合、失明に至ります。進行しても自覚症状が乏しいため、定期的な眼科受診が必要です。
- 糖尿病性腎症:腎臓の糸球体の血管が障害され、最終的には人工透析が必要になることがあります。
その他の合併症
- 歯周病:糖尿病の中でも高齢者、喫煙者、肥満者、免疫力が低下している人ほどリスクが高くなります。血糖コントロールが不良であるほど歯周病が悪化し、逆に歯周病が重症であるほど血糖コントロールも悪化します。糖尿病患者様には定期的な歯科受診をお勧めします。
- 感染症:血糖コントロールが不良だと感染症にかかりやすくなり、重症化します。インフルエンザ、肺結核、尿路感染、皮膚感染が見られ、特に足の皮膚感染は壊疽の原因となります。
- 認知症:糖尿病患者様が認知症になるリスクは、正常な人の2~4倍です。血管による認知症だけでなく、アルツハイマー病のリスクも高まります。
がん
糖尿病患者様は大腸がん(1.4倍)、肝臓がん(1.97倍)、すい臓がん(1.85倍)の発症リスクが高いとされています。
糖尿病のコントロール目標
合併症を防ぐためには、以下の血糖コントロール目標を目指します。
- 血糖正常化を目指す場合:HbA1c6.0%未満
- 合併症予防を目指す場合:7.0%未満
- 治療強化が難しい場合:8.0%未満
高齢者の糖尿病コントロール目標
- 75歳以上の高齢者では、低血糖や脱水、糖尿病性昏睡を防ぐことが基本です。
- 年齢に伴い筋肉量が低下するため、目標体重に基づいてカロリー摂取を決定します。
- 糖尿病合併症が進行し、自己管理が難しくなった場合は、HbA1cの目標を柔軟に設定します。
- 各患者様の状態に応じた血糖コントロール目標に基づいて管理します。例えば、認知症があり、低血糖を起こしやすいインスリンを投与されている場合、HbA1c7.5%~8.5%を目標にするなど、治療は若者より緩やかに行います。
糖尿病の治療
治療は、食事療法と運動療法を基本とし、必要に応じて薬物療法を行います。
薬剤については、最近話題の肥満治療にも用いられる画期的な薬剤もありますので、別の機会にブログで取り上げたいと思います。