西成区シンポジウム登壇報告:在宅医療と介護の現状と課題

2025年2月19日、西成区民センターにて開催された「自宅で受ける医療や介護について ー 西成でずっと生ききるために」シンポジウムに、倉知内科の医師として登壇しました。
本シンポジウムでは、「もっと知りたい在宅医療や介護のこと」をテーマに、当院での在宅医療の実践や、地域における医療・介護未介入者へのアプローチについてお話ししました。
シンポジウムの概要
今回のシンポジウムは、西成区在宅医療・介護連携推進事業の一環として開催され、医療・介護の専門家が多数参加しました。西成区では、高齢化が進む中で、「住み慣れた自宅で最期まで過ごしたい」と考える方が多いものの、適切な医療や介護を受けられないケースも少なくありません。
そのため、「ひとり暮らしでも、家族がいても、自分のケアは自分で決めることが大切」という視点から、在宅医療や介護の選択肢について広く情報提供が行われました。
当院の在宅医療の現状
倉知内科では、訪問診療を通じて地域の患者さんの生活を支えています。特に、独居の高齢者、認知症の方、終末期の患者さんが主な診療対象となっており、現在、58名の患者さんに訪問診療を提供しています。
訪問診療では、定期的に医師が患者さんの自宅を訪れ、診察や治療を行います。また、緊急時には往診を行うこともあります。患者さんの状態に合わせて、訪問看護や介護サービスと連携しながら、できる限り自宅での生活を継続できるよう支援しています。
症例を通じた在宅医療の実践
シンポジウムでは、当院で実際に対応した患者さんのケースをいくつか紹介しました。
症例 1:認知症・慢性呼吸不全の85歳男性
• 民生委員が発見し、病院入院を相談するも、入院が難しい状況。
• 緊急入院は不要と判断し、介護保険の申請をサポート。
• 自宅環境が悪く、地域包括支援センターや訪問看護と連携し、迅速に施設入所を実現。
症例 2:肺がん末期の81歳女性
• 連携病院から緩和ケア目的で紹介される。
• 今年に入りインフルエンザAに罹患し、短期入院を繰り返す。
• 現在は体調が回復し、在宅療養を継続中。
症例 3:慢性気管支炎・慢性呼吸不全の79歳男性
• 医療・介護の介入を拒否しながらも、在宅での点滴治療を希望。
• 訪問看護の支援のもと、意識消失し搬送されるも、その後死亡。
症例 4:肺がん末期・熱傷の91歳男性
• 高齢で移動が困難になり、訪問診療へ移行。
• 足元の電気ストーブで熱傷し、感染も併発するが、訪問看護が尽力。
症例 5:慢性気管支炎・心不全・南京虫問題の86歳男性
• 医療介入を拒否していたが、訪問診療に切り替え、ボランティアの協力で自宅清掃・害虫駆除を実施。
• 支援者とのトラブルもありながら、現在は新しいケアマネージャーと連携し支援を継続中。
今後の課題
- 医療・介護未介入の方の早期発見と支援の仕組みづくり
西成区は単身高齢者が多く、医療・介護を受けられずにいる方が少なくないため、地域包括ケアのさらなる強化が必要。 - 多職種連携の強化
医療・介護の専門職だけでなく、行政や地域ボランティアとの協力が不可欠。 - 在宅医療・介護の啓発活動
住民の皆さんが、元気なうちから「自分が受けたい医療や介護」について考えられるように、情報発信を続けていく。
まとめ
今回のシンポジウムでは、多くの方が「在宅医療や介護についてもっと知りたい」と関心を持ってくださいました。医療や介護が必要になった時、適切な支援を受けられるよう、地域全体で支え合う仕組みがますます重要になってきています。
倉知内科では、引き続き地域の皆さまの在宅医療を支援し、より良い医療・介護の連携を目指して活動していきます。ご自身やご家族の在宅医療について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
資料のご案内
こちらはシンポジウムで使用した資料です。
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📞 お問い合わせ先
倉知内科
内科・呼吸器内科
📍大阪府大阪市西成区花園北2丁目13-7
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