喘息の吸入薬、やめてはいけない理由|「もう治った」が危ない
― 喘息で吸入をやめてはいけない理由
「咳や息苦しさがつらくて受診したのに、吸入を始めたら、思っていたよりずっと早く楽になった」。
喘息の治療では、よくあることです。
ところが、症状が軽くなると「もう治った」「大した病気ではなかった」と感じて、自己判断で吸入をやめてしまう方が少なくありません。
実は、ここに大きな落とし穴があります。
喘息の正体は「気道の慢性炎症」
喘息は、発作のときだけ気道が狭くなる病気だと思われがちですが、本当の姿は少し違います。
発作が起きていないときも、気道(空気の通り道)では炎症が静かにくすぶり続けています。
この炎症があるために、風邪・冷たい空気・ホコリ・ストレスといったちょっとした刺激に気道が過敏に反応し、狭くなって発作が起こるのです。
治療の中心となる吸入ステロイド薬(ICS)は、この気道の炎症をしずめる薬です。
炎症が落ち着くと、咳や息苦しさは比較的早く改善します。効き目を早く実感できるのは、それだけよく効いている証拠でもあります。
「症状が消えた」=「治った」ではありません
ここが最も大切なところです。
症状が消えても、気道の炎症がすっかり消えたわけではありません。
多くの場合、炎症は水面下でくすぶり続けています。
たき火の炎が消えたように見えても、灰の下に火種が残っているのと同じです。
この状態で吸入をやめてしまうと、抑え込んでいた炎症がふたたび燃え上がり、しばらくして発作がぶり返します。
喘息は、風邪のように「治って終わり」の病気ではなく、高血圧や糖尿病と同じく、長くつき合っていく慢性の病気なのです。
自己判断の中断が危ない理由
「調子がよいから」と自己判断で吸入をやめると、気道の炎症が再燃し、ある日突然、強い発作に見舞われることがあります。
喘息の発作は軽いものばかりではありません。
重い発作は呼吸困難から命に関わることもあり、わが国の喘息死はかつての年間約七千人(一九九五年)から大きく減ったものの、今なお毎年千人を超え、その九割以上を高齢者が占めています。
「症状が落ち着いた」と感じても、自己判断で吸入をやめたり、 回数を減らしたりするのは禁物です。
必ず主治医にご相談ください。
本当の治療は「続けて、上手に減らす」
では、ずっと同じ量の薬を使い続けるのかというと、そうではありません。
吸入治療をしっかり続け、症状が十分に安定した状態が一定期間保たれていることを確認したうえで、医師の判断で少しずつ薬を減らしていきます。これを「ステップダウン」といいます。
自己判断で急にやめてしまうことと、医師が経過をみながら計画的に減らしていくことは、まったく別物です。最終的には、できるだけ少ない薬で発作のない状態を保つことが治療のゴールになります。
焦らず続けることが、結果としていちばんの近道です。
当院での喘息治療について
倉知内科クリニックは「喘息死ゼロ作戦」に賛同し、吸入薬の正しい使い方の指導と、定期的な状態の評価を大切にしています。院長自身も気管支喘息を経験しており、患者様のお気持ちに寄り添った診療を心がけています。
喘息やCOPDなど呼吸器内科の診療内容については、当院ホームページの「呼吸器内科」のご案内もあわせてご覧ください。
「吸入をやめてよいか迷っている」「調子はよいけれど続けるべきか不安」という方も、どうぞ自己判断なさらず、一度ご相談ください。