熱中症は「家の中」で起こります― 高齢の方・心臓の病気をお持ちの方のための熱中症対策【2026年版】
今年も体にこたえる暑さがやってきました。昨年(2025年)の夏は全国で10万人を超える方が熱中症で救急搬送され、統計を取り始めてから最も多い人数となりました。亡くなる方も年間2,000人を超え、いまや交通事故の死者数に匹敵する規模です。
2年前にも熱中症の記事を書きましたが、その後、警戒アラートの仕組みや「クーリングシェルター」など新しい制度が整ってきましたので、今回は2026年版として、特に高齢の方と、心臓の病気・高血圧で通院中の方に向けて改めてお伝えします。
熱中症の4割近くは「住居」で発生しています
熱中症というと炎天下の屋外を想像されるかもしれませんが、実際に最も多い発生場所は「住居」で、全体の約38%を占めます。搬送される方の6割近くは65歳以上の高齢者です。つまり典型的な熱中症は、「暑い日に、高齢の方が、自宅の中で」起こっているのです。
さらに深刻なのはエアコンです。東京23区の調査では、屋内で熱中症により亡くなった方の8割以上がエアコンを使っていなかった(設置していなかった場合を含む)と報告されています。
「電気代がもったいない」「風が苦手」という声を診察室でもよく伺いますが、命には代えられません。設定温度は26〜28℃を目安に、扇風機との併用で構いませんので、日中も夜間もためらわずに使ってください。
高齢の方が熱中症になりやすい理由
年齢を重ねると、若い頃に比べて体の中の水分量が減り、暑さや喉の渇きを感じるセンサーの働きも鈍くなります。「喉が渇いていないから大丈夫」が通用しないのが高齢者の熱中症です。腎臓の働きが低下している方では、脱水がそのまま腎機能の悪化につながることもあります。
今日からできる5つの対策
- 喉が渇く前に、時間を決めてこまめに水分を摂る(起床時・入浴前後・就寝前も)
- エアコンは我慢しない。室温計を置いて28℃を超えたらスイッチを入れる
- 一人暮らしの方は、家族やご近所と毎日の声かけ・見守りを
- 外出は朝夕の涼しい時間帯に。日傘・帽子・日陰を活用
- 「なんとなくだるい」「食欲がない」も熱中症の始まりのことがある
心臓の薬を飲んでいる方は、特にご注意ください
当院に通院中の方に特にお伝えしたいのがこの点です。心不全や高血圧の治療でよく使われるお薬には、夏場に注意が必要なものがあります。
利尿薬(尿を出して心臓の負担を減らす薬)を飲んでいる方は、もともと体の水分が失われやすく、汗をかく夏は脱水が一気に進むことがあります。
また、糖尿病や心不全で使われるSGLT2阻害薬も尿量が増えるため同様の注意が必要です。脱水が進むと血液が濃くなり、脳梗塞や心筋梗塞の引き金になることもあります。
一方で、心不全で水分制限を指示されている方が「熱中症が怖いから」と自己判断で水分をたくさん摂ると、今度は心不全の悪化を招きかねません。塩分も同じで、普段減塩をお願いしている方が経口補水液やスポーツドリンクを毎日がぶがぶ飲むと、塩分の摂りすぎになってしまいます。
水分・塩分の摂り方の「さじ加減」は病状によって一人ひとり異なりますので、必ず主治医にご相談ください。夏の間だけ利尿薬の量を調整することもあります。自己判断での中断・減量は禁物です。
「アラート」と「クーリングシェルター」を活用しましょう
2026年は4月22日から10月21日まで、環境省と気象庁による熱中症のアラートが運用されています。テレビの天気予報やスマートフォンで確認できます。
| 熱中症警戒アラート | 熱中症特別警戒アラート | |
|---|---|---|
| 基準 | 暑さ指数(WBGT)33以上が予測されるとき | 府県内すべての地点で暑さ指数35以上が予測されるとき(過去に例のない危険な暑さ) |
| 発表 | 前日夕方・当日早朝 | 前日の午後2時 |
| とるべき行動 | 外出や運動を控え、エアコンを使い、こまめに水分・塩分補給 | 原則、涼しい室内で過ごす。クーリングシェルターが開放される |
大阪市では、特別警戒アラートが出た際に誰でも涼みに入れる「クーリングシェルター(指定暑熱避難施設)」として、区役所・区民センター・図書館など市内の施設を指定しています。
西成区内の施設も含まれていますので、外出中に危険な暑さに見舞われたときや、ご自宅にエアコンがない場合の避難先として覚えておいてください。
大阪府の「クールオアシス」として涼をとれる民間店舗もあります。詳しくは大阪市・大阪府のホームページをご覧ください。
こんなときは、ためらわず受診・救急要請を
危険なサイン
- 呼びかけへの反応がおかしい、意識がもうろうとしている → 迷わず119番
- 自分で水分が飲めない、吐いてしまう → 医療機関へ
- めまい・頭痛・こむら返り・大量の汗 → 涼しい場所で体を冷やし水分・塩分補給。改善しなければ受診を
体を冷やすときは、首・脇の下・足の付け根など太い血管が通る場所を冷やすのが効果的です。また、熱中症で体調を崩したあとの高齢の方は、食欲低下や脱水から肺炎などの感染症を起こしたり、体力が落ちて寝たきりに近づいてしまうことがあります(詳しくは6月の記事「高齢者の肺炎」もご覧ください)。「熱中症が治ったのに調子が戻らない」というときも、遠慮なくご相談ください。
暑さはこれから8月にかけて本番を迎えます。「わが家は大丈夫」と思わず、ご自身と、ご家族・ご近所の高齢の方を、この夏もしっかり守っていきましょう。気になる症状があれば、いつでもご相談ください。
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