【熱中症Q&A】熱中症になりやすい人は?一度なったら運動はいつ再開できる?
Q1.熱中症になりやすい人はどんな人ですか?
A.暑さだけでなく、「その人の体調・持病・薬・行動」が大きく関係します。
熱中症というと、「ものすごく暑い日に起こるもの」と思われがちですが、実際には気温だけで決まるわけではありません。
熱中症の危険性は、「環境 × 体の状態 × 行動」の組み合わせで高くなります。医学的には、脱水、年齢、肥満、暑さへの順応不足、直前の体調不良など、さまざまな要素が熱中症のリスクに関係します。
① 高齢者
まず注意したいのが高齢の方です。
年齢とともに、汗をかく能力が低下する、皮膚への血流を増やして熱を逃がす能力が低下する、のどの渇きを感じにくくなる、暑いと感じてエアコンをつけるなどの行動が遅れる、といった変化が起こります。
そのため、本人が「そんなに暑くない」「水は欲しくない」と言っていても安心とは限りません。高齢の方では、周囲の人が室温、飲水量、食事量、発汗、顔色などを確認することも大切です。
② 小さな子ども
乳幼児や子どもも注意が必要です。体温調節機能がまだ十分に発達していないうえ、自分で暑い場所を避けたり、水分を適切にとったりできない場合があります。
特にベビーカーでは地面からの照り返しを受けやすく、大人より暑い環境になっていることがあります。
③ 糖尿病・心臓病・腎臓病など持病のある方
持病がある方では、熱を逃がしたり、水分を保ったりする能力が低下していることがあります。
例えば糖尿病では、自律神経障害によって発汗が低下し、暑さや喉の渇きを感じにくくなる場合があります。心機能が低下している方では、皮膚への血流を十分増やすことができず、熱を逃がしにくくなることがあります。腎機能が低下している方では、水分や電解質の調節が難しくなる場合があります。
④ 肥満のある方
意外に知られていませんが、肥満も熱中症のリスクになります。
皮下脂肪が多いと体内の熱を外へ逃がしにくくなります。さらに同じ運動でも体重が大きいほど発生する熱量が増えるため、体温が上昇しやすくなります。
⑤ 利尿薬などの薬を飲んでいる方
ここは、内科に通院されている方には特に知っておいていただきたいところです。
薬の中には、暑い時期の体温調節や水分バランスに影響するものがあります。代表的なのが利尿薬です。高血圧、心不全、腎疾患などで使われますが、尿量を増やす作用があるため、暑い時期には脱水に注意する必要があります。
そのほか、β遮断薬、抗コリン作用のある薬、抗精神病薬などの向精神薬、一部の抗うつ薬、睡眠薬・鎮静作用のある薬なども、熱放散、発汗、口渇の自覚、判断力などに影響する場合があります。
ただし、暑いからといって薬を自己判断で中止するのは危険です。心不全や高血圧などでは、薬をやめることのほうが危険な場合があります。暑い時期の水分量や薬について心配な場合は、主治医に相談してください。
⑥ 運動する人・屋外で仕事をする人
若くて健康だから大丈夫、というわけではありません。むしろ激しい運動によって筋肉から大量の熱が発生すると、健康な若者でも重症の熱中症になることがあります。
特にランニング、サッカー、野球、ラグビー、部活動、建設現場などの屋外作業では注意が必要です。防具や厚い作業着を着ている場合は、さらに熱が逃げにくくなります。
⑦ 暑さにまだ慣れていない人
梅雨明け直後や、暑くなり始めの時期に熱中症が増える理由の一つです。
人の体は数日から2週間程度かけて暑さに適応していきます。これを「暑熱順化」といいます。急に暑くなった日に、「去年もこれくらい走っていたから」と同じ運動量をこなすのは危険です。
⑧ 寝不足・体調不良・感染症のあと
睡眠不足や疲労がたまっている日、発熱、下痢、風邪などで体調を崩した直後も熱中症になりやすくなります。
特に下痢や発熱の後は、本人が思っている以上に脱水していることがあります。発熱や感染症がある場合は運動を控え、症状が治った後もしばらく注意して復帰することが大切です。
結局、特に気をつけるべき人は?
まとめると、次のような方は特に注意が必要です。
- 高齢者・乳幼児
- 糖尿病、心血管疾患、腎機能障害などの持病がある方
- 肥満のある方
- 利尿薬など、暑熱時に注意が必要な薬を服用している方
- 激しい運動をする方・屋外労働者
- 暑さにまだ慣れていない方
- 睡眠不足、脱水、感染症などで体調が十分でない方
- 一人暮らしなど、周囲からの見守りや支援が少ない方
「自分は健康だから大丈夫」ではなく、その日の暑さ・体調・運動量を合わせて判断することが大切です。
Q2.運動中に重い熱中症になりました。いつから運動を再開できますか?
A.「翌日元気だから再開」は危険です。症状だけでなく、臓器が回復したことを確認してから段階的に再開します。
ここでいう「重い熱中症」とは、運動によって体温が著しく上昇し、意識障害、混乱、けいれんなどの中枢神経症状を伴う「労作性熱射病(Exertional Heat Stroke:EHS)」を主に指します。これは軽い熱疲労とは別の、命にかかわる病態です。
労作性熱射病では、脳だけでなく、肝臓、腎臓、筋肉、血液凝固系などに障害が出ることがあります。回復期間は重症度や初期治療、とくに迅速な冷却が適切に行われたかによって異なります。
「元気になった」だけでは復帰できません
治療後、「もう熱は下がった」「翌日は普通に歩ける」という状態になっても、肝機能や腎機能、筋肉の障害が後から明らかになることがあります。
そのため運動再開前には、症状が完全に消えていることに加えて、腎機能、肝機能、電解質、CKなど筋障害をみる検査が回復していることを確認することが推奨されています。
まず少なくとも1週間程度は休む
代表的なスポーツ医学の指針では、治療後すぐに運動へ戻ることは勧められていません。
ACSMに基づく復帰プロトコルでは、医療機関からの退院後少なくとも7日間は運動を行わず、その後に診察と必要な再検査を受けることが提案されています。NATAの勧告では、EHS後は7~21日間の休養を取り、血液検査が正常化し、医師の許可が出てから運動を再開するとしています。
つまり、「熱中症になった翌週の大会に間に合わせたい」という理由で無理に復帰するものではありません。
運動は「涼しい場所・軽い運動」から
医師から運動再開の許可が出たら、いきなり炎天下で以前と同じトレーニングに戻すのではありません。
まずは、涼しい環境で、短時間・低強度の運動から始めます。問題がなければ、「運動時間を延ばす → 運動強度を上げる → 暑い環境への曝露を少しずつ増やす」という順番で戻していきます。
復帰プログラムは2~4週間程度かけて進める方法が提案されていますが、これはあくまで目安です。回復速度にはかなり個人差があります。
| 段階 | 目安 |
| 1 | 症状が完全に消失し、検査値の回復を確認する |
| 2 | 医師の許可後、涼しい環境で軽い運動から始める |
| 3 | 問題がなければ運動時間・強度を徐々に増やす |
| 4 | 最後に暑熱環境での運動へ段階的に戻す |
途中で症状が出たら?
運動再開中に次のような症状が出る場合は、無理に次の段階へ進めません。一度中断して再評価します。
- 異常に疲れる
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
- 動悸
- 以前より暑さに弱くなった
- 同じ運動なのに体温や心拍数が上がりすぎる
熱耐性試験(HTT)という検査もあります
労作性熱射病のあと、一部の人では一時的に「暑さに耐える能力」が低下することがあります。その回復を調べる方法として、Heat Tolerance Test(HTT:熱耐性試験)が用いられることがあります。
イスラエル国防軍で使われてきた代表的な方法では、室温40℃、湿度40%の環境で、時速5km・傾斜2%のトレッドミル歩行を120分行い、深部体温や心拍数を評価します。
ただし、これは一般のクリニックで行う検査ではありません。またHTTについては、世界共通の標準的な復帰判定法が確立しているわけではありません。検査が正常なら「絶対に再発しない」と保証できるものでもありません。
回復が遅い場合、繰り返し熱中症を起こしている場合、競技選手・軍人など高度な運動能力への復帰が必要な場合に、専門施設で検討される検査と考えるとよいでしょう。
一度熱中症になると、またなりやすい?
労作性熱射病の既往がある方では、一部に熱耐性の低下が残り、再発リスクが高くなる可能性があります。
だからこそ、暑熱順化、十分な睡眠、体調不良時には運動しない、適切な水分補給、運動強度の調整、WBGTの確認など、再発予防が重要になります。
まとめ
熱中症は「暑かったから起こった」だけではありません。
同じ暑さでも、年齢、持病、薬、脱水、肥満、睡眠不足、体調不良、暑さへの慣れ、運動量などによって危険性は大きく変わります。
特に高齢の方や持病のある方では、ご本人が暑さや喉の渇きを十分に感じていないこともあります。
また、運動中に意識障害を伴うような重い熱中症を起こした場合は、「元気になったから運動再開」ではありません。
症状が完全に改善し、肝臓・腎臓・筋肉などの検査値が回復したことを確認したうえで、医師の指導のもと、「休養 → 涼しい環境で軽い運動 → 徐々に強度を上げる → 暑熱環境へ戻す」という段階的な復帰が基本です。
熱中症は予防できる病気です。
「自分は熱中症のリスクが高いのだろうか」「薬を飲んでいるが夏場の水分はどうすればよいのか」など気になることがありましたら、ご相談ください。
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