夏の下痢、冷たいものの食べすぎ?それとも食中毒?
暑い日が続くと、
「冷たいものを飲みすぎて下痢になった」
「アイスを食べたあとからお腹の調子が悪い」
「昨日食べたものが悪かったのかな?」
という相談が増えてきます。
夏は冷たい飲み物や食べ物をとる機会が増える一方で、気温が高いため細菌による食中毒にも注意が必要な季節です。
今回は、
「冷たいものでも下痢になるの?」
「食中毒とはどう見分ければいいの?」
という疑問を中心に、夏の下痢についてわかりやすく説明します。
Q1.冷たいものを食べたり飲んだりしすぎると、本当に下痢になりますか?
A.なることはあります。ただし、「冷たいこと」だけが原因とは限りません。
暑い日には、
- 冷たいお茶や水
- ジュース
- アイスクリーム
- かき氷
- 冷たい麺類
などを一度にたくさんとることがあります。
お腹が敏感な方、特に過敏性腸症候群(IBS)のある方では、冷たい飲み物が腸を刺激して、腹痛や便意、下痢を起こしやすくなることがあります。
ただし、
「冷たいものを飲むと腸が冷えて、誰でも下痢になる」
というほど単純ではありません。
実際には「冷たさ」だけでなく、一緒にとっているものが原因になっている場合があります。
例えば、
- ジュースや清涼飲料水の大量の糖分
- 果汁などに含まれる果糖
- アイスクリームや牛乳に含まれる乳糖
- 脂肪分の多い食品
- 一度に大量に飲食すること
などです。
特に、牛乳を飲むと以前から下痢をしやすい方では、乳糖不耐症が関係していることもあります。
ですから、
「夏に冷たいものを食べたあと下痢になった」=「冷えただけ」
とは限りません。
Q2.では、食中毒による下痢はどう見分ければいいですか?
A.発熱、強い腹痛、血便、嘔吐、同じものを食べた人にも症状がある場合は食中毒を考えます。
夏場は食品中で細菌が増殖しやすくなるため、細菌性食中毒に注意が必要です。
代表的なものには、
- カンピロバクター
- サルモネラ
- 腸管出血性大腸菌(O157など)
- 腸炎ビブリオ
- 黄色ブドウ球菌
などがあります。
大阪府でも、O157などの腸管出血性大腸菌による感染症や食中毒は、初夏から秋にかけて増加すると注意を呼びかけています。
食中毒を疑うポイントとしては、
- 発熱がある
- 強い腹痛がある
- 水のような下痢を何度もする
- 血便がある
- 嘔吐を伴う
- 同じ料理を食べた家族や友人も下痢をしている
などがあります。
ただし、症状だけで原因を完全に見分けることはできません。
Q3.夏に特に注意する食べ物は?
A.生肉・加熱不十分な肉・生の魚介類などには注意しましょう。
○鶏肉:カンピロバクター
カンピロバクター食中毒は、日本で発生件数の多い細菌性食中毒の一つです。
主な原因は、生または十分に加熱されていない鶏肉です。
「新鮮だから生でも大丈夫」ということはありません。
鶏刺し、鶏のたたき、中心まで火が通っていない焼き鳥などには注意しましょう。
○牛肉など:O157などの腸管出血性大腸菌
O157などの腸管出血性大腸菌は、加熱不十分な肉などから感染することがあります。
特徴的なのは、
激しい腹痛や血便
です。
特に小さなお子さんや高齢の方では、溶血性尿毒症症候群(HUS)という重い合併症を起こすことがあります。
焼肉やバーベキューでは、肉の中心までしっかり加熱しましょう。
○魚介類:腸炎ビブリオ
夏場の刺身や魚介類では、腸炎ビブリオにも注意が必要です。気温が高い状態で長時間放置すると、細菌が急速に増殖することがあります。
購入した魚介類は早めに冷蔵庫へ入れ、できるだけ早く食べることが大切です。
Q4.下痢になったら何をすればいいですか?
A.一番大切なのは「脱水を防ぐこと」です。
下痢をすると、水分だけでなく塩分などの電解質も失われます。
特に、
- 高齢者
- 乳幼児
- 糖尿病のある方
- 心臓病のある方
- 腎臓病のある方
では脱水になりやすいため注意が必要です。
一度に大量に飲むのではなく、
少量ずつ、こまめに水分をとる
ようにしましょう。
下痢の回数が多い場合は、水やお茶だけでなく、経口補水液(ORS)を利用する方法もあります。
Q5.下痢のときは食べない方がいいですか?
A.必ずしも絶食する必要はありません。
吐き気が強い間は無理に食べなくても構いませんが、水分がとれて食欲が戻ってきたら、少しずつ食事を再開してよいでしょう。
「下痢だから何日もおかゆだけ」
とする必要もありません。
ただ、下痢がひどい時には、
- 脂っこい食事
- 大量の甘い飲み物
- アルコール
- 大量の乳製品
などで症状が悪化することがあります。
食べられる範囲で無理なく戻していきましょう。
Q6.下痢止めは飲んでもいいですか?
A.下痢の種類によっては、使わない方がよいことがあります。
「下痢をしているから、とにかく止めたい」
と思うのは当然です。
しかし、
- 血便
- 高熱
- 激しい腹痛
- 細菌性食中毒が疑われる場合
では、自己判断で腸の動きを強く止めるタイプの下痢止めを使用しない方がよい場合があります。
特にO157などの腸管出血性大腸菌では、腸の動きを抑える薬によって、細菌が作った毒素が体外へ排泄されにくくなる可能性があります。
下痢は「止めれば治る」というものではありません。
血便や強い腹痛がある場合には、市販薬を飲む前に医療機関へ相談してください。
Q7.抗生物質を飲んだ方が早く治りますか?
A.「下痢=抗生物質」ではありません。
感染性胃腸炎でも、抗生物質が必要ないものはたくさんあります。
原因によっては抗生物質を使う場合もありますが、むやみに飲めば早く治るというわけではありません。
また、抗生物質そのものが下痢の原因になることもあります。
以前にもらった抗生物質が家に残っているからといって、自己判断で飲むことはおすすめしません。
Q8.どんな下痢なら病院へ行った方がいいですか?
次のような症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。
血便が出る
O157などの腸管出血性大腸菌をはじめ、強い腸炎を起こす病気の可能性があります。
強い腹痛がある
単なる胃腸炎ではなく、虫垂炎など別の病気が隠れていることもあります。
高い熱が続く
細菌性腸炎などの可能性があります。
水分がとれない
飲んでも吐いてしまう場合には脱水が進むことがあります。
尿が極端に少ない
脱水が進んでいるサインの一つです。
ふらつく・ぐったりしている
特に高齢の方では注意が必要です。
下痢が何日も改善しない
軽い急性下痢症の多くは数日で改善します。
2~3日経っても全く良くならない、徐々に悪化している、1週間近く続くような場合は一度診察を受けましょう。
Q9.高血圧や糖尿病の薬を飲んでいます。下痢のときもいつも通り飲んでいいですか?
A.食事や水分がとれないほどの下痢の場合は、一度ご相談ください。
下痢が続くと脱水になり、血圧が普段より低くなったり、腎機能が悪化したりすることがあります。
特に、
- 利尿薬
- 一部の降圧薬
- SGLT2阻害薬などの糖尿病治療薬
を使用している方では、脱水時に注意が必要な場合があります。
一方で、薬を自己判断で中止することにも問題があります。
「食事がとれない」「水分が十分とれない」「下痢や嘔吐が続いている」
という場合は、服薬について主治医へ相談してください。
Q10.夏の食中毒を防ぐには?
食中毒予防の基本は、
「つけない・増やさない・やっつける」
です。
つけない
- 調理前、食事前、トイレ後には手を洗う
- 生肉用と調理済み食品の箸やまな板を分ける
増やさない
- 購入した食品は早めに冷蔵庫へ
- 調理した食品を長時間室温に放置しない
- お弁当の常温放置にも注意する
やっつける
- 肉類は中心までしっかり加熱する
- 特に鶏肉、生焼けのハンバーグなどには注意する
夏のバーベキューでは、
生肉をつかんだ箸で、そのまま焼けた肉を食べない
ことも大切です。
まとめ
夏に下痢をすると、
「冷たいものを食べすぎたかな」
と思うことがあります。
実際、冷たい飲み物や食べ物を大量にとることで、お腹が敏感な方では下痢が起こることがあります。
また、冷たい飲食物と一緒に摂取する大量の糖分、乳糖、脂肪などが下痢を悪化させている場合もあります。
一方で、夏は細菌性食中毒が増える季節でもあります。
特に、
発熱、血便、強い腹痛、繰り返す嘔吐、水分がとれない
といった症状がある場合には、「冷たいものを食べたせいだろう」と決めつけないことが大切です。
また、血便や高熱を伴う下痢では、自己判断で下痢止めを使用しない方がよい場合があります。
高齢者や基礎疾患のある方では、下痢そのものよりも脱水によって体調を大きく崩すこともあります。
気になる症状がある場合には、お早めにご相談ください。