立ち上がるとクラッとするのはなぜ?「立ちくらみ」の原因と対策
「床から立ち上がった瞬間、目の前が暗くなった」
「朝起きて立とうとするとフラッとする」
「お酒を飲んだ後、立ち上がったら倒れそうになった」
このような症状を一般に「立ちくらみ」と呼びます。
立ちくらみというと「貧血かな?」と思われる方が多いのですが、実際には貧血だけでなく、
血圧の低下、降圧薬、脱水、飲酒、立ち上がり方、加齢など、さまざまな原因があります。
今回は、立ちくらみがなぜ起こるのか、よくある疑問にお答えします。
Q1.なぜ立ち上がるとクラッとするのですか?
A.立ち上がった瞬間、かなりの量の血液が下半身へ移動するからです。
横になった状態から立ち上がると、重力によって約300~800mLの血液が足や腹部へ一時的に移動するとされています。
500mLのペットボトル1本前後の血液が下の方へ移動すると考えると、イメージしやすいかもしれません。
そのままでは心臓へ戻る血液が減り、脳への血流も低下します。しかし通常は、自律神経がすぐに働いて血管を収縮させ、心拍数などを調節して血圧を保ちます。
ところが、
- 加齢
- 脱水
- 降圧薬などの薬剤
- アルコール
- 自律神経の障害
などによって、この調節がうまくいかなくなると、
「目の前が暗くなる」
「フワッとする」
「頭から血の気が引く」
といった立ちくらみが起こります。
医学的には、立った後3分以内に上の血圧が20mmHg以上、または下の血圧が10mmHg以上低下する状態を「起立性低血圧」と呼びます。
Q2.床や布団から急に立つと、なぜ起こりやすいのですか?
A.低い姿勢から一気に立つほど、急激な血液移動が起こるからです。
特に、
- 布団から急に立つ
- 床に座った状態から立つ
- しゃがんだ姿勢から急に立つ
といった場合は注意が必要です。
高齢になると血圧を調節する反応が遅くなり、さらに足の筋力も低下します。ふくらはぎの筋肉には、足にたまった血液を心臓へ押し戻す「筋ポンプ」の役割があるため、筋力低下も立ちくらみを起こしやすくします。
立ち上がる時は、
寝た状態 → 座る → 少し待つ → ゆっくり立つ
という順番を意識しましょう。
特に夜間のトイレでは、立ちくらみから転倒や骨折につながることがあるため注意が必要です。
Q3.血圧の薬を飲んでいると立ちくらみしやすくなりますか?
A.薬の種類や体調によっては起こりやすくなります。
降圧薬は血圧を適切に下げるために必要ですが、血圧が下がりすぎれば立ちくらみの原因になります。
特に、
- 夏場
- 食欲が低下している時
- 下痢や嘔吐がある時
- 発熱している時
- 水分が十分とれていない時
には、普段と同じ薬でも血圧が低くなることがあります。
特に利尿薬は尿から水分を出す作用があるため、脱水が重なると注意が必要です。
また、高血圧の薬以外にも、前立腺肥大症に使われるα遮断薬など、立ちくらみに関係する薬があります。
ただし、立ちくらみがするからと自己判断で薬を中止するのはおすすめしません。
家庭血圧を記録して、主治医に相談してください。季節や体調に応じて薬の種類や量を調整した方がよい場合があります。
Q4.お酒を飲むと立ちくらみしやすくなりますか?
A.はい。アルコールは立ち上がった時の血圧低下を強くすることがあります。
立ち上がると血液が下半身へ移動するため、通常は血管を収縮させて血圧を保ちます。
ところがアルコールを飲むと、この「血管を締めて血圧を保つ反応」が弱くなることがあります。
健康な成人を対象とした研究でも、飲酒後には立位に似た負荷をかけた際の血管収縮反応が弱まり、飲酒していない時より血圧が大きく下がることが確認されています。
つまり、
「お酒を飲んだ後に急に立ったらクラッとした」
というのは、単に酔っているだけではなく、アルコールによる血圧調節の変化でも説明できます。
さらに、
アルコール + 降圧薬 + 脱水 + 急な立ち上がり
が重なると、より立ちくらみを起こしやすくなります。
飲酒後、特に夜間にトイレへ行く時は、ゆっくり立ち上がりましょう。
Q5.夏は立ちくらみが増えますか?
A.暑さと脱水によって増えることがあります。
暑い日には皮膚の血管が広がり、汗によって体の水分も失われます。
体内の水分が減れば循環する血液量も減るため、その状態で立ち上がると血圧を維持しにくくなります。
特に、
- 高齢者
- 利尿薬を飲んでいる方
- 下痢や嘔吐をしている方
- 食事量が減っている方
- 屋外で長時間過ごした方
では注意が必要です。
「暑い日に立ったら目の前が真っ暗になった」という場合、熱中症だけでなく脱水による血圧低下も考える必要があります。
Q6.立ちくらみ=貧血ですか?
A.必ずしもそうではありません。
これはよくある誤解です。
貧血が強くなると、
- だるさ
- 息切れ
- 動悸
- フラフラする
といった症状が起こるため、立ちくらみに関係することはあります。
しかし、「立ち上がった瞬間にクラッとする」という場合は、まず血圧の変化を考えることが大切です。
一方、消化管出血や月経による大量出血などでは、貧血に加えて循環する血液量も減るため、立ちくらみが起こりやすくなります。
「立ちくらみ=鉄分不足」と決めつけず、必要に応じて血液検査を受けましょう。
Q7.自宅でできる対策は?
急に立ち上がらない
特に朝や夜間は、まず座って少し待ってから立ちましょう。
足を動かしてから立つ
足首を動かしたり、ふくらはぎに力を入れたりすると、下半身にたまった血液を心臓へ戻す助けになります。
脱水を避ける
夏場、発熱、下痢、嘔吐の時には特に注意します。ただし心不全や腎臓病で水分制限を受けている方は、主治医に相談してください。
飲酒後は特にゆっくり
お酒を飲んだ後は、血圧を保つ反応が弱くなっている可能性があります。
家庭血圧を測る
立ちくらみが続く方は、普段の血圧を記録しておくと診察に役立ちます。
Q8.どんな立ちくらみなら受診した方がいいですか?
次のような場合は、一度医療機関で原因を確認しましょう。
- 立ちくらみを繰り返す
- 最近急に増えた
- 実際に意識を失った
- 転倒した
- 動悸や胸痛を伴う
- 息切れが強い
- 黒い便や血便がある
- 降圧薬を飲んでいて血圧が低い
特に、意識を失う、胸痛がある、激しい動悸がある、手足の麻痺やろれつの回りにくさがある場合は、単なる立ちくらみと考えず速やかな受診が必要です。
まとめ
立ちくらみは「貧血」だけで起こるものではありません。
人が立ち上がると、約300~800mLもの血液が一時的に足や腹部へ移動します。
通常は自律神経が働いて血圧を保ちますが、
- 急な立ち上がり
- 加齢
- 降圧薬・利尿薬
- アルコール
- 脱水
- 貧血や出血
などが重なると、血圧の調節が追いつかず立ちくらみが起こります。
特に高齢の方では、立ちくらみそのものよりも転倒・骨折が大きな問題になります。
床や布団から立つ時には、
「まず座る、少し待つ、それから立つ」
を習慣にしましょう。
また、
「降圧薬を飲んでいる」「暑くて汗をかいた」「お酒を飲んだ」「急に立ち上がった」
など、複数の条件が重なるほど立ちくらみは起こりやすくなります。 最近立ちくらみが増えてきた方は、薬を自己判断で中止せず、家庭血圧を記録したうえで一度ご相談ください。