「高血圧管理・治療ガイドライン2025」血圧の新目標をわかりやすく解説します
昨年、「高血圧治療ガイドライン2019」を基に当院ブログ記事を参考に、高血圧について解説させていただきました。
あれから1年、医療の世界は常に進歩しています。
そしてついに、6年ぶりにガイドラインが大幅に改訂され、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が発表されました!
「あれ、名前が少し変わった?」
そうなんです。今回は単なる「治療」から、「管理」という言葉が加わりました。これが今回の改訂の最も重要なメッセージの一つです。
この記事では、2段階に分けて新しいガイドラインを深掘りしていきます。
- 第1段階:何が変わったの?2019年版との違いをサクッと解説
- 第2段階:一歩進んだ治療のハナシ。お薬や生活習慣はどうなる?
ご自身の健康管理に直結する大切な情報です。ぜひ最後までお付き合いください!
第1段階:ここが変わった!ガイドライン2025の最重要ポイント
まずは、前回2019年版のガイドラインから何がどう変わったのか、特に重要なポイントを3つに絞って解説します。
ポイント①:目標がシンプルに!「全員、130/80未満」へ
高血圧の基準値は「診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上」と据え置かれた一方
今回の改訂で最も大きな変更点が、降圧目標の統一です。
| 2019年版(75歳未満) | 2019年版(75歳以上) | 2025年版(新目標) | |
|---|---|---|---|
| 診察室血圧 | 130/80 mmHg未満 | 140/90 mmHg未満 | 全年齢で 130/80 mmHg未満 |
| 家庭血圧 | 125/75 mmHg未満 | 135/85 mmHg未満 | 全年齢で 125/75 mmHg未満 |
これまでは年齢や糖尿病、腎臓病などの合併症によって目標値が細かく設定されており、少々複雑でした。
しかし2025年版では、年齢や合併症の有無にかかわらず、全ての人の目標が「診察室で130/80mmHg未満、家庭で125/75mmHg未満」に原則統一されたのです。
もちろん、ご高齢の方や多くの合併症をお持ちの方など、個々の状態に合わせて慎重に判断する必要はありますが、目指すべきゴールが明確になったことで、患者さんも医療者も同じ目標に向かって治療を進めやすくなりました。
ポイント②:「治療」から「管理」へ。主体はあなた自身です!
ガイドラインの名称に「管理」が加わったのは、単に薬で血圧の数値を下げるだけでなく、患者さん自身が主体となって、生活習慣の改善や家庭での血圧測定を通じて、生涯にわたって血圧をコントロールしていくという考え方が、より一層重視されるようになったからです。
高血圧は、自覚症状がないまま静かに血管を傷つけ、脳卒中や心筋梗塞といった命に関わる病気を引き起こす「サイレントキラー」です。だからこそ、日々の「管理」が何よりも大切なのです。
ポイント③:ますます重要に!毎日の「家庭血圧」測定
「管理」の主役が患者さん自身であるなら、その最も重要なツールが家庭での血圧測定です。病院で測る血圧(診察室血圧)だけでは、あなたの本当の血圧は見えてきません。
- 白衣高血圧:病院だと緊張して血圧が上がってしまう
- 仮面高血圧:病院では正常なのに、家では高い隠れ高血圧
こういった状態を見逃さず、治療が本当に効いているかを確認するためにも、家庭での測定が不可欠です。
特に、脳卒中などのリスクが高いとされる早朝の血圧を把握することが重要視されています。朝と晩の測定を習慣にしましょう。
●家庭血圧の測り方(推奨手順)
- 朝:起床後 1 時間以内、朝食前、排尿後に測定
- 夜:就寝前に測定
- 1 回 2 測定し、平均値を記録
- 1 〜 2 週間分の記録を医師に提示
第2段階:一歩踏み込む!これからの高血圧治療
さて、ここからは少し専門的な内容に踏み込んで、具体的な治療法がどう変わっていくのかを見ていきましょう。
生活習慣の改善は「最強の降圧薬」である
今回のガイドラインでも、薬物治療の前に、あるいは薬物治療と並行して行うべき最も重要なこととして生活習慣の改善が挙げられています。特に注目すべきは以下の2点です。
- 減塩目標「1日6g未満」の徹底 「減塩は薬と同じくらい効く」と明記され、その重要性が改めて強調されました。まずは、ラーメンのスープを飲み干さない、漬物を控える、醤油やソースは「かける」より「つける」など、できることから始めましょう。
- 「尿中ナトリウム/カリウム比」の活用 少し専門的ですが、これは「塩分(ナトリウム)をどれだけ摂って、それを排出するのを助けるカリウムをどれだけ摂れているか」を見る新しい指標です。カリウムは野菜や果物に多く含まれます。つまり、「減塩+野菜・果物をしっかり摂る」ことが、科学的にも推奨されるようになったのです。
- 運動 有酸素運動を週 150 分
- 体重 BMI 25 未満
- 飲酒 日本酒 1 合/ビール中瓶 1 本まで
お薬との付き合い方も変わる
●薬物治療は“1カ月以内に開始”が新基準
今回の改訂で特に強調されたのが、薬物治療の開始時期です。
- 高リスクの高値血圧(130〜139/80〜89mmHg)
- 低・中リスクの高血圧(140/90mmHg以上)
では、まず生活習慣の改善を指導したうえで、1カ月以内に再評価を行うことが明記されました。
もし十分に血圧が下がらなければ、生活習慣改善を続けながら 薬物療法を開始する流れです。
2019年版では「おおむね1カ月後をめどに再評価」と表現されていましたが、2025年版では「1カ月以内に開始」とより厳密に、先延ばしせず早期介入する姿勢が打ち出されました。
単剤で効果不十分であれば早期に併用療法も必要です。
👉 背景:複数の研究で、治療開始が早いほど脳心血管イベントの抑制効果が高いことが示されており、「早めに動くこと」が予後改善に直結するからです。
まとめ:新しい常識で、未来の健康を守ろう
今回の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」の改訂は、高血圧と向き合うすべての人にとって大きな転換点です。
- 目標はシンプルに!全年齢で「130/80未満」を目指す
- 受け身の「治療」から、主体的な「管理」へ
- 家庭血圧と生活習慣の改善が、薬以上に重要なカギ
血圧は、あなたの未来の健康を映す鏡です。まずはご自身の血圧を知ることから始め、かかりつけの先生とよく相談しながら、新しい基準に基づいた血圧「管理」をスタートさせましょう!
注意
高血圧の降圧目標は強化されましたが、寒暖差のある季節は血圧の上下も激しく注意が必要です。
適正血圧でも夏は熱中症、脱水にて血圧低下、冬は血圧上昇のリスクもありますので、日頃の体調管理が重要と考えます。