インフルエンザは心筋梗塞のリスクも上げる?ワクチンで防げる重症化と今季の接種案内
インフルエンザ予防接種を10月5日から開始します
今季は流行が早い年。ワクチンの効果としくみ、費用・受け方まで呼吸器内科医が解説します
当院では2026年10月5日(月)より、インフルエンザワクチンの接種を開始します。
今シーズンは、全国で8月下旬(第34週)に流行入りが発表されました。感染症法の施行以降、2009年の新型インフルエンザに次いで2番目の早さです。
大阪府でも第36週(8月31日〜9月6日)に流行期に入り、大阪市の定点当たり報告数は第39週(9月21日〜27日)に5.14まで増えています。
例年なら「11月までに」とお伝えするところですが、今年は「なるべく早めに」の接種をおすすめします。
インフルエンザは「ただの風邪」ではありません
国内のインフルエンザ患者は例年約1,000万人にのぼり、インフルエンザの流行に関連した死亡(超過死亡)は年間約1万人と推計されています。
亡くなる方の多くは高齢者や持病のある方です。怖いのはウイルスそのものよりも、次のような合併症です。
| 合併症 | 内容 |
| 肺炎 | ウイルスそのものによる肺炎に加え、弱った気道に肺炎球菌や黄色ブドウ球菌が二次感染する「細菌性肺炎」が高齢者の重症化の主な原因です。 |
| 心筋梗塞・心不全 | カナダの研究(NEJM 2018年)では、インフルエンザと診断されてから7日以内は、心筋梗塞を起こすリスクが約6倍に高まることが示されました。強い炎症で血液が固まりやすくなり、心臓に負担がかかるためです。 |
| 持病の悪化 | COPD・喘息の急性増悪、心不全の悪化、糖尿病の血糖コントロールの乱れなど、持病が一気に悪くなるきっかけになります。 |
| その他 | 心筋炎、脳症(主に小児)、体力・筋力の低下による寝たきりへの移行など。 |
特に接種をおすすめしたい方
- 65歳以上の方
- COPD(慢性閉塞性肺疾患)、喘息、間質性肺炎など呼吸器の病気をお持ちの方
- 心臓病(心筋梗塞の既往、心不全)、糖尿病、腎臓病のある方
- ステロイドや免疫を抑える薬を使っている方
- 高齢者や持病のある方と同居している方、介護・医療に携わる方
今シーズンのワクチンの特徴
今季のワクチンは3種類のウイルス株に対応する「3価ワクチン」で、3株すべてが昨シーズンから新しい株に変更されています。
| 型 | 2026/27シーズンの製造株 |
| A型(H1N1) | A/スイス/6849/2025 |
| A型(H3N2) | A/ミシガン/105/2025(現在流行中のサブクレードKに対応) |
| B型(ビクトリア系統) | B/東京/EIS13-175/2025 |
以前は4種類の株に対応する「4価ワクチン」でしたが、B型のうち「山形系統」のウイルスが2020年3月以降、世界中で検出されなくなったため、WHOの推奨に沿って2025/26シーズンから3価に変更されています。
インフルエンザワクチンの種類
現在、国内で承認されているインフルエンザワクチンは大きく3種類あります。
| 標準量HAワクチン(注射) | 高用量HAワクチン「エフルエルダ®」 | 経鼻生ワクチン「フルミスト®」 | |
| ワクチンの性質 | 不活化ワクチン(ウイルスを分解し、表面のHAたんぱくを取り出したもの) | 不活化ワクチン(HA抗原量が標準量の4倍) | 弱毒生ワクチン(毒性を弱めた生きたウイルス) |
| 対象年齢 | 生後6か月以上 | 60歳以上 | 2歳以上19歳未満 |
| 接種方法・回数 | 皮下注射 13歳以上は1回(13歳未満は2回) | 筋肉注射・1回 | 鼻へのスプレー(左右)・1回 |
| 特徴 | 最も広く使われている。生きたウイルスを含まないため、ワクチンでインフルエンザにかかることはない | 免疫の反応が弱くなりがちな高齢者向け。65歳以上約3万2千人の臨床試験で、標準量より発病予防効果が24%高かった | 鼻の粘膜にIgA抗体もつくり、ウイルスの入り口で防ぐ。妊娠中の方、免疫が低下している方は接種できない |
| 今季の状況 | 当院で接種します(大阪市の定期接種もこのワクチン) | 2024年12月承認。今季から75歳以上の定期接種に加わる予定だったが、製造上の理由で発売が延期され、今季は使用できない | 2024年秋に国内発売。小児向けのため当院では取り扱っていない |
65歳以上の方へ ―「高用量ワクチンを待つべき?」
高用量ワクチンの発売時期は、現時点で未定です。今季はすでに流行が始まっているため、待たずに標準量ワクチンを早めに接種しましょう。
標準量ワクチンでも、重症化や死亡を減らす効果がしっかり確認されています。
なお海外では、卵を使わずに細胞で培養したワクチン、免疫を高める成分(アジュバント)を加えた高齢者向けワクチン、遺伝子組換えワクチンなども使われていますが、現時点で国内では承認されていません。
ワクチンが効くしくみ
日本で使われている注射のインフルエンザワクチンは、ウイルスを分解して表面のたんぱく質(ヘマグルチニン:HA)を取り出した「不活化HAワクチン」です。生きたウイルスは含まれていないため、ワクチンでインフルエンザにかかることはありません。
接種すると、血液中にHAに対する抗体(IgG抗体)がつくられます。この抗体は、ウイルスが体内で増えて肺や全身に広がるのを抑えます。
一方で、鼻やのどの粘膜でウイルスの侵入そのものを防ぐ力(粘膜のIgA抗体)は十分につくられません。これが「ワクチンを打ってもかかることはあるが、重症化はしにくい」理由です。
- 効果が出るまで:接種後約2週間
- 効果のピーク:接種後約1か月
- 効果の持続:約5か月が目安
また、年齢とともに免疫の反応は弱くなり(免疫老化)、高齢の方ほど抗体が上がりにくく、下がりやすい傾向があります。流行する株も毎年変わるため、昨年接種した方も今年あらためての接種が必要です。
ワクチンの効果 ― データで見る「重症化予防」
ワクチンの最も大きな役割は、肺炎や入院、命に関わる重症化を防ぐことです。主な研究結果をまとめました。
| 対象 | ワクチンの効果 | 出典 |
| 65歳以上の高齢者施設入所者 | 発病を34〜55%阻止 死亡を82%阻止 | 厚生労働省 |
| 心筋梗塞を起こした方(2,532人の臨床試験) | 接種後1年間の死亡が約4割減少(4.9%→2.9%) | IAMI試験(Circulation 2021) |
| COPDの方 | 急性増悪の回数を減らす(質の中等度のエビデンス) | コクラン・レビュー(2018) |
「有効率」とは?
たとえば有効率50%とは「接種した人の半分がかからない」という意味ではありません。接種しなかった場合に比べて、発病するリスクが半分に減る、という意味です。
流行する株とワクチン株の一致具合によって、年ごとに効果は変動します。
すでに流行が始まっていますが、今からでも遅くありません
「もう流行しているなら、今さら打っても意味がないのでは」というご質問をよくいただきます。
インフルエンザの流行は例年12月〜2月にピークを迎え、春先まで続くこともあります。効果が出るまでの約2週間を考えると、今のうちに接種しておくことでシーズンの本番に備えられます。
ワクチンとあわせて、手洗い・こまめな換気・咳エチケットも続けましょう。
接種費用
| 区分 | 対象となる方 | 費用 |
| 大阪市 定期接種 | 65歳以上の大阪市民 60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはHIVによる免疫機能に一定の障がいのある方 | 1,500円 |
| 費用免除 | 上記の定期接種対象者のうち、生活保護受給中の方・市民税非課税世帯の方(証明書類が必要) | 無料 |
| 任意接種(自費) | 上記以外の方 | 3,000円 |
大阪市の定期接種の期間は2026年10月1日〜2027年1月31日で、お一人1回です。期間を過ぎると自費での接種となりますのでご注意ください。
新型コロナ・肺炎球菌ワクチンもあわせて
新型コロナワクチンも、大阪市の定期接種(65歳以上の方など、免除制度あり)として同じ期間に実施されています。インフルエンザワクチンとの同時接種が可能で、接種間隔の制限もありません。
また、インフルエンザの後に起こる細菌性肺炎の原因として最も多いのが肺炎球菌です。65歳以上で肺炎球菌ワクチンをまだ受けていない方は、この機会にご相談ください。
接種を受けられない方・注意が必要な方
当日、接種を受けられない方
- 明らかな発熱(37.5℃以上)がある方
- 重い急性の病気にかかっている方
- 過去にインフルエンザワクチンの成分で、アナフィラキシー(強いアレルギー反応)を起こしたことがある方
注意が必要な方
次に当てはまる方は接種できることがほとんどですが、事前に医師へお申し出ください。
- 心臓・腎臓・肝臓・血液の病気、呼吸器の病気(間質性肺炎・喘息など)で治療中の方
- 以前の予防接種で、2日以内に発熱や全身の発疹が出たことがある方
- けいれんを起こしたことがある方、免疫不全と言われたことがある方
- 卵アレルギーのある方(ワクチンに含まれる卵由来成分はごく微量で、多くの場合は接種可能です)
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる方(接種後は注射部位をしっかり長めに押さえます)
副反応について
| 種類 | 症状 | 頻度 |
| 局所の反応 | 注射部位の赤み・腫れ・痛み | 10〜20% |
| 全身の反応 | 発熱・頭痛・寒気・だるさ | 5〜10% |
| まれな重い反応 | アナフィラキシー、ギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)など | ごくまれ |
多くの副反応は2〜3日で治まります。アナフィラキシーは接種後30分以内に起こることが多いため、接種後30分ほどは院内または近くで様子を見てください。
当日の入浴は問題ありませんが、注射部位を強くこすらないようにしましょう。
もしインフルエンザにかかったら
急な38℃以上の発熱、関節痛・筋肉痛、強いだるさが出たら、早めに受診してください。抗インフルエンザ薬は発症から48時間以内に使うことで、熱の出ている期間を短くする効果が期待できます。
高齢の方や持病のある方では、息苦しさ・胸の痛み・意識がぼんやりするといった症状は肺炎や心臓の合併症のサインのことがあり、すぐの受診が必要です。
当院での接種のご案内
- 当院は内科のため、お子さまの接種は行っておりません。かかりつけの小児科でご相談ください。
- 上腕への皮下注射で、1回接種です。
- 注射ワクチンのみの取り扱いです。鼻にスプレーする経鼻ワクチン(フルミスト)の取り扱いはありません。
受付方法
予約は不要です。ただし、ワクチンの在庫に限りがあるため、ご来院前に必ずお電話で在庫をご確認ください。
TEL:06-6631-2991
持ち物
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど、氏名・生年月日・住所がわかるもの)
- 費用免除の方は、生活保護受給証明書または市民税非課税を証明する書類
- お薬手帳(服用中のお薬がある方)
今年は流行の始まりが早いぶん、長いシーズンになる可能性があります。ワクチンは「かからないため」だけでなく、「かかっても重くしないため」のものです。ご自身と、ご家族や周りの方を守るために、早めの接種をご検討ください。
関連ページ
参考資料
- 厚生労働省「インフルエンザワクチン(季節性)」「インフルエンザQ&A」
- 厚生労働省「新型インフルエンザに関するQ&A」(国内の患者数・超過死亡の推計)
- Kwong JC, et al. Acute Myocardial Infarction after Laboratory-Confirmed Influenza Infection. N Engl J Med. 2018;378:345-353.
- Fröbert O, et al. Influenza Vaccination After Myocardial Infarction (IAMI). Circulation. 2021;144:1476-1484.
- DiazGranados CA, et al. Efficacy of High-Dose versus Standard-Dose Influenza Vaccine in Older Adults. N Engl J Med. 2014;371:635-645.
- サノフィ「エフルエルダ®筋注」発売時期延期のお知らせ(2026年7月)/フルミスト®点鼻液 添付文書(第一三共)
- Kopsaftis Z, et al. Influenza vaccine for chronic obstructive pulmonary disease (COPD). Cochrane Database Syst Rev. 2018.
- 大阪市「インフルエンザワクチン接種について」「新型コロナワクチン接種について」(令和8年度)
- 大阪市「インフルエンザの発生状況」(2026年第39週)/大阪府 報道発表(2026年9月)
- 東京都感染症情報センター「2026〜2027年シーズンインフルエンザHAワクチン製造株」